化学物質委員会 活動報告

☆☆化学物質委員会   石井 員良        エコチル調査について

=化学物質委員会= 石井 員良 エコチル調査について

 

皆さんは、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を耳に したことがおありでしょうか? 現在、私たちは、人工的に作り出された「化学物質」を利用して、便利で快適な毎日の生活を送って います。しかし、身の回りに存在する化学物質が人の健康に与える影響については、詳しいことは分か っていないのが現状です。特に、化学物質の影響を受けやすいのではないかと懸念されている胎児や子 供の健康に対する影響があまり分かってはいません。 そこで、環境省は、2010 年度から 2032 年度にかけて、赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時から 13 歳 になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因(化学物質を含む)が子どもたちの成長・発達にど のような影響を与えるのかを明らかにする調査「エコチル調査」を実施しています。この調査は、約 10 万組の子どもたちとその両親が参加している大規模な疫学調査です。今年度は、開始後 10 年度目とな り、最も早く生まれた子供たちが小学校 2 年生になりました。調査で得られた膨大なデータは、整理や 分析に多くの時間を費やして いますが、研究成果もまとめ られています。 「エコチル調査」の研究成 果の一部が、国立環境研究所 の 2019 年度公開シンポジウ ム「変わりゆく環境と私たち の健康」で報告されましたの で、ご紹介します。 ◇研究成果①:妊娠中の血液中の金属類濃度と早産の関係は? 妊婦の血液中の金属類濃度(カドミウム、鉛、水銀、セレン、マンガン)と早産(37 週に満たない時 期の出産)との関係を解析した結果、血液中のカドミウム濃度を 4 つのグループに分けた場合、カドミ KECA ニュース No.66 2019 年 8 月 13 日発行 -9- ウム濃度の最も低いグループに比べ、最も濃度の高いグループでは、早期早産(22 週から 33 週)の頻 度が 1.9 倍であることが分かりました。これは、カドミウムのみで認められたものです。 ◇研究成果②:妊娠中の血液中のマンガン濃度とお子さんの出生体重の関係は? 妊婦の血液中のマンガン濃度と生まれてきたお子さんの出生体重を解析した結果、男児の出生体重は 血液中のマンガン濃度 19μg/L で最も重く、マンガン濃度が低値あるいは高値では出生体重が減少して いました。また、血液中のマンガン濃度を 4 つのグルプに分けた場合、男児では、マンガン濃度のやや 高いグループに比べて、最も低いグループでは SGA(在胎週数に見合う標準的な出生体重に比べて小さ く生まれた状態)の頻度が 1.4 倍であることが分かりました。 備考:4 つのグループ分け(低い、やや低い、やや高い、高い) エコチル調査について詳しく知りたい方は、http://www.env.go.jp/chemi/ceh/ (子どもの健康と環境に関する全国調査「エコチル調査」、環境省)を、ご覧になって下さい。 また、国立環境研究所の公開シンポジウム(年 1 回、6 月に開催され、毎年、テーマが異なります) の内容(2018 年度まで資料公開)は、http://www.nies.go.jp/event/sympo.html をご覧になって下さ い。 


☆☆化学物質委員会 石井 員良  「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」を読む

 1.暮らしの中の化学物質

  化学物質は私たちの生活を豊かにし、また、便利で快適な毎日の生活を維持するうえで欠かせないものとなっています。身の回りには多くの化学製品があります。

  風呂・洗面・化粧品

 石鹸、ボディソープ、シャンプー・リンス、歯磨き粉、ハンドクリーム、ヘアースプレー、口紅、マニュキアなど

 食事

 調味料、保存料、増粘剤、香料、甘味料、着色料など

 洗濯

 衣料用洗剤、漂白剤、柔軟剤、アイロン用のり、ドライクリーニング用薬品

 掃除

 台所用洗剤、トイレ用洗剤、カビ取り剤、消臭剤、芳香剤、ガラス用洗剤

 ・工作・塗装

 塗料、シンナー、ワックス、接着剤、のり

 自動車など 

自動車の排気ガス、ガソリン、エンジンオイル、潤滑油、さび取り剤

 害虫対策

 殺虫剤、殺虫スプレー、衣類用防虫剤、園芸用防虫剤

 医薬品

 塗り薬、飲み薬、消毒薬、貼り薬など

  

現在、原材料や製品など、いろいろな形で流通している化学物質は数万種類といわれています。

 私たちは、意識するしないにかかわらず、日常の生活や事業活動において多くの化学物質を利用し、それらを大気や水、土壌を通じて排出しています。

  私たちが排出している化学物質のすべての量を把握することは、不可能ですので、次のような性質を持つ化学物質をPRTR制度の対象としています。

 (1)人の健康を損なうおそれがあるもの(例 ベンゼン)

 (2)動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがあるもの(例 ノニルフェノール)

 (3)オゾン層を破壊し、太陽紫外放射の地表に到達する量を増加させることにより人の健康を損

  なうおそれがあるもの(例 ジクロロジフルオロメタンCFC-12))

 

 その数は、562 物質です。

 

 次に例として挙げられた化学物質の性質を調べてみましょう。

  

化学物質

主な用途

有害性

ベンゼン

 

 

 

基礎化学原料として多方面の分野で使われており、ベンゼンから合成される代表的な化学物質には、スチレン(合成樹脂や合成ゴムの原料)、シクロヘキサン(ナイロン繊維の原料)、フェノール(合成樹脂、染料、農薬などの原料、消毒剤)、無水マレイン酸(合成樹脂、樹脂改良剤などの原料)などがあります。

また、ガソリンやタバコの煙にもベンゼンは含まれています。

人への発がん性(白血病)が認められています。また、高濃度のベンゼンを長期間体内に取り込むと、造血器に障害を引き起こすことが報告されています。

ノニルフェノール

 

 

ノニルフェノールは、工業用の界面活性剤として用いられるノニルフェノールエトキシレートの原料、印刷インキの材料、酸化防止剤の原料などに使われています。

水生生物に悪影響を及ぼすことが示唆されています。また、同一濃度では女性ホルモンよりはかなり弱いながらも、メダカに対する内分泌かく乱作用を持つことが推察されています。

なお、今のところラットに対する試験では、明らかな内分泌かく乱作用は確認されていません。

ジクロロフルオロメタン

 

 

不燃性であること、熱に対しても化学的にも安定で分解しにくいことなどの性質があり、断熱材の発泡剤、業務用冷凍空調機器の冷媒、家庭用冷蔵庫の冷媒、飲料用自動販売機の冷媒、カーエアコンの冷媒、ぜん息治療薬用噴霧吸入器の噴射剤として使われてきました。

フロン類は成層圏オゾンを破壊することにより、間接的に人の健康へ影響を及ぼします。オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。オゾン層が減少すると地上に達する紫外線が増え、皮膚がんや白内障の増加など、人の健康への影響が懸念されています。

 

化学物質の性質を調べるときに役に立つ「化学物質ファクトシート(2012年版)」を環境省が発行しています。無料ですが郵送料がかかります。在庫の確認を環境省にしてみてください。環境省のWEBサイトからダウンロードできます。

 http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html

 

また、化学物質の検索には、次のWEBサイトが便利です。

 https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/systemTop

  

<< 豆知識 >>

 CAS番号

化学物質に関する情報を検索するために必要な番号がCAS番号です。

 化学物質を識別するための番号で国化学会の情報部であるCAS (Chemical Abstracts Service) によって付与・管理されています。化学物質は厳密に区別され,一つの化学物質に一つのCAS 番号 が付与されます。

  

化学物質の種類

 届け出る化学物質は、次のように分類されています。

 ①第一種指定化学物質(462物質)

  人の健康を損なうおそれがあるもの、動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがあるもの、オゾン層を破壊するおそれがあるもの

 ②特定第一種指定化学物質(15物質)

  第一種指定化学物質のうち、発がん性などがあるもの

 ③第二種指定化学物質

  第一種指定化学物質と同じ有害性の条件に当てはまり、製造量の増加等があった場合には、環境中に広く存在することとなると見込まれるもの

  

引用文献

PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」(環境省、平成309月)

 

 

☆☆化学物質委員会   石井員良   (2019年4月1日現在)

 

化学物質委員会 2019年度活動計画

 

 

 

化学物質に関する周知活動の手段として、2015年度(平成27年年度)から継続している化学物質に関するセミナーの開催を計画中です。

 

 (1)KECAのホームページによる情報発信

 ①化学物質を理解する上で必要な基本的事項を分かり易く解説をします。

 新聞、インターネットなどで話題になっている化学物質の関する事柄を分かり易く解説します。環境カウンセラーとしては、市民の方に自分で調べられる情報源(官公庁、財団法人、官公立の研究機関など)を紹介し、化学物質に関する話題を正確に理解してもらえるように手助けをする立ち位置(材料提供)です。

市民・事業者向けとしては、「PRTRデータを読み解くための市民ハンドブック」を解説する講座を開設します。なお、このガイドブックは、有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物として事業所の外に運び出されたかというデータ(PRTRデータ)をとりまとめ、わかりやすく説明したものです。

 

(2)化学物質に関するセミナー

PRTRデータを読み解くための市民ハンドブック」を分かり易く解説するためのセミナーを開催する予定です。また、今まで開催したセミナーで使用した資料(化学物質のリスクアセスメント、化学物質のSDS,ラベル、化学物質の保管など)を編集した講座をホームページに開設する予定です。


☆☆化学物質委員会   石井員良   (2018年11月30日現在)

 

KECAホームページに新しい講座を開講します。 

皆さん、「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」をご存知ですか? 

環境省が毎年発行しているガイドブックです。 

このガイドブックは、有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物として事業所の外に運び出されたかというデータ(PRTRデータ)をとりまとめ、わかりやすく解説したものです。 

  現在、私たちが便利で快適な生活ができるのは、工業的に生産された化学物質や化学物質から作られた化学製品のおかげです。 

 多くの化学製品が生産され、消費され、廃棄されています。これらの化学製品は私たちの生活環境や私たちの健康に悪い影響を与えていないのでしょうか? 

  そこで、環境中に排出される化学物質の種類と量を把握し、排出量を減少させる目的で「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質把握管理促進法:化管法)」(平成11713日法律第86号)が作られ、PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)ができました。平成13年度(2001年)よりデータの収集が始まりました。 

  さて、PRTR制度により集められたデータから実際どのようなことが分かるのでしょうか?

 「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」を参考に、皆さんにわかりやすく説明する講座をKECAのHPに開講します。ご期待ください。

 追伸:「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」(平成28年集計結果から)(平成30年9月発行)は、環境省から入手できます。ガイドブックは無料ですが、郵送料が300円(1冊)かかります。また、WEBサイト:PRTRインフォメーション広場(http://www.env.go.jp/chemi/prtr/archive/guidebook.html)からダウンロードできます。 


☆☆化学物質委員会   石井員良   (2018年8月13日現在)

 

◇平成30年度活動計画

 

化学物質に関する周知活動の手段として、平成27年度から継続している化学物質に関するセミナーの開催を考えています。

 

(1)KECAのホームページによる情報発信

 

①化学物質を理解する上で必要な基本的事項を分かり易く解説をします。

 

 ②新聞、インターネットなどで話題になっている化学物質の関する事柄を分かり易く解説する。環境カウンセラーとしては、市民の方に自分で調べられる情報源(官公庁、財団法人、官公立の研究機関など)を紹介し、化学物質に関する話題を正確に理解してもらえるように手助けをする立ち位置(材料提供)で、結論を押し付けないようにする。

 

 ③事業者向けとしては、今まで開催したセミナーで使用した資料を編集して分かり易く解説する。

 

(2)化学物質に関するセミナー

 

  今まで開催したセミナーの主要テーマである①化学物質のリスクアセスメント、②化学物質のSDS,ラベル、③化学物質の保管、④化学物質のリスク評価を今後も継続して採り上げ、セミナーを開催する予定です。

 

 

 

◇「職場における化学物質管理」セミナー開催報告

 

化学物質を取り扱う職場では、人に対する有害性ばかりではなく、化学物質の危険性についても注意を払わなくてはいけません。取り扱う化学物質の種類や保管している化学物質の量が少ないと言って化学物質の管理が疎かになっていないでしょうか。

 

そこで、①化学物質の危険性に関する法律及び保管時の注意事項などで管理を見直す、②化学物質のリスクアセスメントの実施により、SDSラベルの読み方を周知する必要性が高くなっていますので、その方法について、③化学物質のリスクアセスメントで分かり難い有害性の評価方法についてよりよく知ってもらうために、という内容で、職場における化学物質管理を見直す切っ掛けとなるように、平成3033日(土)に「職場における化学物質管理」セミナーを開催しました。

 

平成29年度も終わり頃の開催ではありましたが、13名(うち、KECA会員8名)の方に参加いただきました。セミナーは、講演のみで、講師は、いずれも化学物質委員会の会員が担当し、チームワークよくセミナーを進行することができました、

 

 参加者のアンケート調査では、セミナー全体の評価として、「非常に役立った」、「具体事例の紹介があって理解しやすい」など、好意的な評価が多く、いずれの講演も参加者のほぼすべての方が、満足(大変参考になった、少し参考になった)されていることが分かりました。ただ、セミナーの記載が半日であったため、「リスクアセスメントの演習時間を設けたらよかった」とのご意見もありました。

 

 今回のセミナー開催の体験を今後の化学物質委員会の活動に役立てたいと考えています。ご期待ください。改めて、セミナー開催にあたっての化学物質委員会及びKECA会員の皆様のご協力に感謝いたします。

 

 なお、セミナーの資料をご希望の会員の方は、KECA事務局までご連絡願います。